Derek and the Dominos - Layla
第一の 矢には射抜かれ
恋に堕つ
されど後追い せぬが粋なり
第一の矢で懲りるのが正道。第二、第三、と全身射られてハリネズミになるのは外道。それでもなお手を延ばし続ける境地までとことん突き詰めれば、聖なる狂者マジュヌーンと称えられる。
「われを汝の心におきて印(おしで)のごとくせよ・・・其は愛は強くして死のごとくなればなり」
(「雅歌」第八章六節)
ライラは魅了の奇術師。彼女が隣で笑ってくれるだけで、その目が、その唇が、その首筋が、その声が、その仕草が、その香りが、その存在そのものが、世界に彩りを与えた。ライラへの憧れは、生きている意味を与えた。接吻を切望するほどにライラを眺め過ぎた彼は、彼女の形相が自分自身の内側に灼き付いて離れなくなった。それは忘我の境地。彼がいま愛しているのは、もはや実在した想いびとライラではなく、眩い理想を帯び神格化された女神ライラなのだ。
この恋の 行き着く果てに
成就無し
われは彷徨う 巡礼のごと
ライラとカイスの恋が知れ渡った時に、「ライラ・マジュヌーン」と書かれた紙片が人々の間に出回り、それを手にしたカイスは「ライラ」の部分を破り捨て、言う。「真実の恋を知った者に二つの名は要らぬ。恋の本質は人の目に映らぬもの。私は恋の形相であればよい。この形相のうちに本質が秘められている。ライラは恋の本質、ライラという名はなくてよいのだ」(pp.113-114) と。
https://www.naruto-u.ac.jp/_files/00097031/laila.pdf
